画期的な判決(水俣病訴訟大阪地裁判決)言い渡されました。

画期的な判決(水俣病訴訟大阪地裁判決)言い渡されました。

2023年09月29日 【 お知らせ

国は、水俣病被害の最終解決として2009年成立の水俣病被害者救済法(特措法)により救済に線引きをしました。しかし、この線引きから漏れる被害者が多数いました。本訴訟は、特措法に基づく救済を受けられなかった大阪府などに住む128人が国や熊本県、原因企業チッソに損害賠償を求めたものです。9月27日大阪地裁で言い渡された判決で、沿岸で暮らした原告ら全員を水俣病と認め、1人あたり275万円の賠償を命じました。

 

判決では、メチル水銀を摂取したかどうかについて画一的な判断をせず「居住歴や魚介類の摂取状況、同居家族内の水俣病患者の有無をもとに検討する必要がある」と説明しました。

原告らは、不知火海の魚介類を継続的に多食し、水俣病を発症する程度に水銀を摂取したと認め、手足のしびれなどの感覚障害は「他の原因では説明できない。」としました。

救済法の対象地域外の原告に関しても「毛髪や魚介類の水銀値から、水銀汚染が不知火海沿岸地域に広がっていたと推認される」と指摘しました。

「居住地域は水俣湾から遠く、水銀濃度は低かった」との国の主張は、「魚介類は海を自由に移動する。主張を単純に採用できない」として退けました。

原告のうち6人については、国などの責任が生じる前に水銀を摂取したとして、チッソのみに賠償を命じました。

また、水銀摂取から長期間が経過して発症する「遅発性水俣病」の存在も認め「特定の年数で発症時期を限定することはできない」と判断しました。

損害が発生して20年で損害賠償請求権が失われる民法の「除斥期間」については、水俣病と診断された時を起算点とし「いずれも20年以内であり、除斥期間を経過していない」と結論づけました。

さらに、特筆すべきは、「水俣病に関する報道により1956年ごろには、不知火海沿岸各地に魚介類に対する警戒感が広がっていたとしても、一時的なものといえる。食事の大部分を不知火海の魚介類に依存し、現金収入が乏しい地域や家庭で、不知火海の魚介類が節食されなかったとは認めがたい。」とし、被害者たちの生活の実態に踏み込んで、被害者に寄り添う判断を示しました。

長年被害を放置し続けた国の責任は極めて重いものです。この判決は、特措法が定める対象地域などの「線引き」にとらわれず、広く賠償を命じたものであり、国の誤りを司法が厳しく指摘したものとして極めて重要な判決となります。

現実に認容された金額は、被害者が被った長年にわたる精神的苦痛に比べればあまりにも少額ですが、この判決をきっかけとして、さらに多くの被害者が救済されることを祈ります。

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